黒い旗3
カルト教団である武装勢力に拘束されている後藤健二氏の妻(リンコさん)のコメントの一部を引用します。

【私は自分の子供と家族をそこから守ろうと考えていました。私たち夫婦には、2人の幼い娘がいます。
私たちの娘は健二が日本を離れた時には、わずか生後3週間でした。私は、2歳の上の娘が再び父親に会えることを望んでいます。
2人の娘が父親のことを知りながら、成長していくことを望んでいます。
私の夫は善良で、正直な人間です。苦しむ人びとの困窮した様子を報じるためにシリアへ向かいました。
健二は、湯川遥菜さんの居場所を探し出そうとしていたと推測できます。
私は遥菜さんが亡くなったことに、非常に悲しい思いをしました。
そして、彼の家族の悲しみを思いました。家族の皆さんがどれだけつらい思いをされているかがわかるからです。
1月20日、私は湯川遥菜さんと健二の身代金として2億ドルを要求する動画を見ました。
それ以来、私とグループとの間でメールを何回かやりとりしました。私は、彼の命を救おうと戦ったのです。
20時間ほど前に、誘拐犯は私に最新の、そして最後の要求と見られる文章を送ってきました。
「リンコ、お前はこのメッセージを世界のメディアに対して公表し、広げなければならない。
さもなければ、健二が次だ。
29日木曜日の日没までに健治と交換するサジダがトルコ国境付近にいなければ、ヨルダン人パイロットを即座に殺すつもりだ」
これは私の夫にとって最後のチャンスであり、彼の解放と、ムサス・カサスベさんの命を救うには、あと数時間しか残されていないことを心配しています。
ヨルダン政府と日本政府の手中に、二人の運命が委ねられていることを考えて欲しいと思います。
同時に、私はヨルダン政府と日本政府のすべての努力に対して感謝しています。
ヨルダンと日本の人々から寄せられる同情に対しても感謝しています。私が小さかったころ、私の家族はヨルダンに住んでいました。
そのため私は12歳になるまで、(ヨルダンの首都である)アンマンの学校に通っていました。
だから、私にはヨルダンとヨルダンの人々に対して、特別な感情を持っており、多くの思い出があります】

彼女は、このコメントの末尾においてヨルダン政府やわが国の政府に感謝を述べています。

しかし、私はあえて苦言を呈したい。

後藤健二氏はプロのジャーナリストですが、取材・職務の過程で武装勢力に拘束されたのではありません。
渡航は危険であるとの外務省の警告を承知のうえで、武装勢力に拘束されていた軍事マニアの湯浅某を救出するために、彼は自己責任にもとづき行動していて武装勢力に拘束さたのです。

彼に生後3週間の娘と2歳の娘がいることなど、もはや「どうでもいい個人的な事情」であって、危険な地域に勝手に出かけておいて、人質になったからヨルダン政府やわが国の政府に泣き付き、助けて欲しい、さらに武装勢力の代弁者・手先となって自爆テロリスト「サジダ」との交換に応じて欲しい、ヨルダン政府と日本政府の手中に、夫の運命が委ねられていると主張すること自体が恥知らずであって、戦場ジャーナリストの妻として「身の程知らず」と言うべきなんです。
ちなみに後藤健二氏の母親の発言も、どこか「トンチンカン」でした。

武装勢力は寄せ集めの「狂人集団」、烏合の衆にすぎません。
武力で支配したり恐喝することは簡単ですが、国家を相手にした交渉ができるような「特命全権大使」レベルの権限を有する人物は武装勢力の中におりません。
もし武装勢力が要求する条件をヨルダン政府との交渉の中で少しでも譲歩したら、武装勢力内部からの突き上げに合い、その人物は「裏切り者」として制裁を受けることになります。
こうした危険を冒してまで、ヨルダン政府と交渉する「まともな実力者」は武装勢力側にはいないんです。

なぜ断言できるのか?
これまでに、武装勢力を代表するような人物が実名や顔出しして公然と要求した人物がいましたか?
2億ドル(230億円)という巨額・驚愕・大量のドル紙幣を誰がどのように受け取るのですか?
10トントラック数台分のドル紙幣をどうやって輸送するつもりなんでしょうか?
連番ではない使い古した紙幣を誰が調達するのですか?

要するに武装勢力は、場当たり的な寄せ集めの「狂人集団」、所詮は「烏合の衆」なんです。
自ら強引な要求を出しておきながら、事態が複雑な利害が絡む交渉に直面した際に急に沈黙したり「こう着状態」に陥るのは、相手に指揮命令系統がない、真のリーダーがいない、そして「切り札」(ヨルダン軍パイロットの生存)がない証拠なんです。